お弁当箱が帰って来た
Sさんは4段重のベトナム式お弁当箱を手渡してくれながら
「家で、いちど開けますよね?」と言った。
今年初のお料理教室が無事に終わった帰り際。
突然あらわれたそのアルミ4段(30年くらい前にベトナムで買った。
このチープ&デコラティブな感じはもうなかなか探せないみたい、と軽く自慢)
を帰り支たくしているみんなもチラチラ気になっている。
私が意味をつかみ切れずに「えーと?」って顔をして待ってると、
Sさんは照れくさそうに「ちょこっと入れてあるもんですから」
とつづけてくれた。!あ!
去年の12月。Sさんからクリスマスのホームパーティーのために料理をというメールが届いた。
タケハーナのおせちを毎年食べてくれていた仲間が集まるパーティー。
メインのブイヤベースやちょっとしたサラダは作る予定というので、
ワインのおつまみになるようなものをちょこちょこ考えてみることにしました。
さて入れてく物どうしよう。当日、私が届けに伺えなくてSさんが受け取りにきてくれることになってる。
適度な大きさの使い捨て容器を買って来たのだけれど、
思いついた料理をそれに詰めるところを具体的に想像したら。。気が萎えた。
困って台所をぐるりと見渡せば、バチッと目が合ったのがベトナムの4段お弁当箱。
やった、お料理ちょうど4品。キミの出番だね。ひさしぶり。


1⃣《アボカドと卵の柚子胡椒クリームあえ・ミモザ仕上げ》
しっかりホイップで和える。
2⃣《季節の野菜と果物のマリネ・バルサミコビアンコフレーバー》
野菜に合わせて直火焼き、オイル焼き、素揚げなど。
3⃣《スモーク鶏と原木舞茸の焼き物・かるくカレー風味のカリフラワーソース》
桜チップでほんのりスモークをかけてから調理。
4⃣《牛すね肉と白花豆の煮込みwithフレッシュトマトソテー》
豆好きというリクエストに応えて。
喜んでもらえることをいろいろ妄想しながら作る料理は楽しい。
そして盛りつけが決まるとちょっと誇らしい。
容器を返してもらわなきゃならない手間もきっと許してくれるだろう、
と思える信頼関係がたまらなく嬉しい。
そしてそして今夜、帰ってきた4段重。
私が詰めたものよりもずーっと心を溶かす仕掛けがいっぱいで、
今日の疲れなんかお風呂で流すその前に、すっかり消えてなくなっていましたよ。